全てのメンテナンスの準備として、プラスチックセーフタイプのパーツクリーナー古タオルやペーパーウェスなど、使い古しの歯ブラシ綿棒爪楊枝新しい純正グリースをご用意ください。また汚れてもいい服装で、室内で作業される場合は新聞紙やビニールシートを敷いてから作業を開始してください。

脚部のメンテナンスは汚れの清掃とグリースの入れ替えが主な作業となります。脚パイプ内外やロック部品に汚れが付着するとロックが甘くなり、必要以上の力で締めなければならなくなります。またグリースに摩耗した金属粉が混入すると黒く見えるようになってきます。この状態のまま締める、緩めるという動作を繰り返すと研磨剤をつけて動作させているのと同じような状態となり、ネジ山の摩耗が早まります。汚れや砂粒などの異物が付着するとジャリジャリとした感覚で同様の結果となりますので早めに除去してください。

1.まず、最下部パイプ先端に装着されている石突ゴムを取り外します。円筒のパイプにゴムがかぶさっているだけで接着もされていませんので、コツさえわかれば取り外しは非常に簡単です。

最下段の一段上のパイプ(3段三脚の2段目、4段三脚では3段目、5段三脚は4段目)だけを10cmほど伸ばしてしっかりロックします。

最下段のパイプはロックを緩めて完全にフリーにしておきます。

2.最下段のパイプを引き出し、石突ゴムを握ってパイプを収納する方向に少し勢いをつけて動かすと、石突ゴムと金属ロックリングがコツンと当たります。

最初は弱めに、コツが掴めてきたら少し強めにコツンコツンと何度も当ててみてください。石突ゴムがだんだん緩んで抜けてきます。当たっているのはゴムと金属ですから傷みを気にする必要は一切ありません。

組み立てる際は石突ゴムの内側にパーツクリーナーを少量吹きかけて滑りを良くしてから押し込んでください。

3.石突ゴムが外れたら、次に脚パイプを付け根部分で固定している台板のボルト&ナット(HPB-501・502)を1/2インチ(年式によっては13mm)のボックスレンチを2本使用して、脚部を1本ずつ取り外します。脚部アダプター(HPL-601)は最下部パイプで押し出すようにして抜き出します。長年ご使用でパイプが変形している場合はなかなか出てこないこともありますが、固定はされていませんので少しずつ押し出すようにします。各金属ロックリングをいっぱいまで緩めて内部ロックリングと一緒に取り外すと、各パイプは上部から引き抜くことができます。

屋外で使用される頻度が高い三脚ほど、汚れや砂粒が多く付着しています。脚パイプの外側、ネジ山部分を拭き、パイプ内もカットしたタオル等を棒で押し込んで反対側から抜いて汚れを拭き取ります。歯ブラシやタオル等を使用して金属ロックリング内側のネジ山部分、内部ロックリングを清掃します。中性洗剤を使用して洗浄することも可能です。

脚部強化リングと三脚ボディが接する面を拭き、脚部アダプターの中央穴も綿棒を使用して清掃します。最後にパーツクリーナーを使用して古いグリースも完全に除去します。

洗浄した場合は完全に乾燥させてから、ネジ部分だけに新しい純正グリースを綿棒で薄く均等に塗布して組み直します。グリースがネジ山以外の部分にはみ出したり内部ロックリングに付着した場合は拭き取ってから組み立ててください。

エレベータのメンテナンスは主にラックギア部分の洗浄です。EVポスト最下部のストラップリング止ボタンを、先の出ていないボールペン等で押しながらストラップリングを下方向に取り外し、そのままクランクギアを回し続けます。ストラップリング止ボタンがEVガイドパイプに接触してギアが止まりますので、今度は指でボタンを押しながらギアを回せばそのまま上方向に引き抜くことができます。

EVポストのラックギアに異物が噛み込んでいないか、汚れで詰まっていないかを確認しながら古歯ブラシや爪楊枝等で清掃します。同時にショック止ゴムリングやストラップに劣化がないか、EVスナップリングに錆が出ていないかをチェックします。

EVポストのラックギアの横に上から下まで1本、平らに切削してある面があります。この面にEVストッパーノブの先端が当たって固定されますので、油汚れなどが付着していると滑ってしまいます。この面はパーツクリーナーで完全に汚れを落としておきます。

三脚ボディにEVポストを戻す際は、通常モデルの場合クランクギアの握りを10時の方向に向けてギアを噛み合わせ始めると、いっぱいまで下げた時にだいたい水平の位置で止まると思います。微調整は1段ずつ噛み始めの位置を変えながら調整してください。

三脚ボディのメンテナンスは各脚パイプとの接続部と、中央のEVガイド部分、EVストッパーノブの清掃です。クランクギアはピンで抜け止め固定されていますので一般の方では分解できません。EVストッパーノブをいっぱいまで緩めて取り外し、ボディ内側の汚れと上下EVリングを清掃します。

EVストッパーノブはネジ山部分と先端の樹脂部分をパーツクリーナーで汚れや古いグリースを完全に落としてから、ネジ山部分だけにごく薄くグリースアップします。

EVストッパーノブのネジ部分は、操作性を考慮してあえて細かい目のネジを使用しています。取り外してから挿入する際に斜めにねじ込んでしまうとアルミ製の三脚ボディのネジ山を削って途中で動かなくなってしまいます。ねじ込む際には特に慎重に、斜めになっていないかを常にチェックしながら行ってください。

他のグリースアップが必要な個所は、脚部強化リングとの接触面と、脚部取付ボルトのネジ山が刻まれていない円筒部分だけです。

雲台部分のセルフメンテナンスができる箇所は多くありません。縦軸・横軸の固定ナットはピンで抜け止め固定されていますし、取り外すだけでもある程度の専門工具が、完全分解には工場レベルの設備が必要となります。無理に分解しようとすると修復不能となってしまう可能性もありますので、雲台部分は動作に問題がないか、劣化や破損がないかというチェックのみに留めておいた方が無難です。

チェックポイント1:縦軸・横軸のパン棒に曲がりがないかどうか

HUSKYは雲台からパン棒が2方向に伸びており、もう1本EVギアのクランクシャフトも突出しています。もちろんもとは操作性を考えてこういう形状になっているのですが、もう一つ大事な役割があります。何かの要因で三脚が倒れてしまったときにカメラボディやレンズを守るために、その衝撃を曲がることで吸収してくれるような材質を選定しています。軽くするために柔らかいアルミ材で作ると折れるだけで衝撃を吸収してくれませんし、硬すぎる材質では曲がらずに跳ねてしまい被害が拡大する恐れがあります。カメラやレンズにダメージがあれば当然撮影の続行はできませんが、パン棒が少し曲がっただけだったりクランクギアが収納できなくなる程度で済めば、とりあえずその場だけは何とか乗り切れる可能性が高いですね。

ただ曲がったまま使用を続けているとスチール製のパン棒シャフトと真鍮製の内部ロックコマが平行に当たらず、真鍮側が一方的に負けてどんどん削れてきてしまいます。最終的には内部ロックコマを貫通してパン棒が直接連結ビボットや雲台ドラムに当たってしまいます。このような状態では固定力もコントロール性もあったものではないので、少しでも曲がった状態で使用を継続することはお勧めしません

では曲がったパン棒を真っ直ぐに曲げ直せばいいかというとそうでもありません。一度曲がった金属を力で戻すと内部に細かいクラックが入り、その状態で締めたり緩めたりを繰り返すとクラックがどんどん成長し、突然ボキッと折れてしまいます。撮影中にこうならないよう、やはり一度曲がってしまったパン棒はなるべく早く新品に交換してください。

チェックポイント2:カメラ止ネジのトラブル

HUSKYのカメラ止ネジは雲台トッププレートには固定されておらず、下に少し重さのあるロックホイールがついているので、機材を外して持ち運ぶ際にカラカラと動きます。トッププレートに埋め込まれているインサートナットも同じ真鍮なので、あまりカラカラさせているとそれぞれ少しずつネジ山が潰れてきてしまいます。軽度であれば修正もできるのですが、あまりひどくなるとネジ山が噛み合わなくなってトッププレートから外すことが出来なくなってしまいます。

カメラ止ネジは時々取り外してロックホイールやインサートナットも含めたネジ山部分の清掃を実施し、ごく薄くグリースアップしておくと機材の着脱がスムーズです。

またカメラ止ネジが固定されていない状態で無理な力が加わるとカメラ止ネジが曲がってしまい、しっかり機材を固定することが出来なくなってしまうこともありますので、移動の際に一つだけ習慣としていただきたいことがあります。機材を取り外したあとにカメラ止ネジがカラカラと動くことのないように、先端が雲台トッププレートと面一になる程度まで引っ込めてから軽くロックリングを締めておく。このひと手間でネジ山の潰れを防止し、撮影時の無用なトラブルの可能性が一つ減ってくれます。

チェックポイント3:コルクシートの劣化

HUSKYのコルクシートは厚さ0.8mmほどしかなく、平らな金属面にそのまま貼り付けてあります。このコルクシートが原因で撮影結果に悪影響を与えることはありませんので、剥がして使用することはお勧めしません。ゴムを練り込んで成型されたハイカーコルクのシートは非常に質がいいのですが、やはり天然素材なので年月とともに、使用とともに劣化してきます。正直なところ、薄さゆえの弱さがあることも事実です。新品状態では薄いオレンジ色(肌色という表記の方がイメージしやすいかもしれませんが今は差別的だとの指摘で使われませんね)ですが、劣化してくると茶色が濃くなってきて硬化し、表面にテカリが出てきます。機材が滑りやすくなり、しっかり締めたつもりでも回転方向に回ってしまう可能性がありますので早めに貼り換えてください。

このコルクシート、今まで60年以上ずっとボンドで貼り付けられていました。年数が経過して固着してしまうと剥がすのもひと苦労だったりするのですが、パーツクリーナーでボンドを溶かしながらプラスチックのへらで根気よくこそいでいくと綺麗に剥がせます。ユーザーメンテナンスで貼り付けるときにどんな種類のボンドがいいのかというお問い合わせも多く、自己判断で瞬間接着剤を使用されたりすると次に剥がすときに大変です。また薄く均等にボンドを伸ばして確実に貼り付けるにも少々技術が必要でしたので、2023年からこの接着は両面テープに変更しました。ボンドと比較すると接着強度や耐久性は落ちてしまいますが、ユーザー目線ではより簡単に、積極的にコルクシートの貼り替えができるメリットの方が大きいとの判断です。機材を締め付けた状態で回転方向に大きな力を掛けると剥がれてしまったり角が欠けてしまうことがあり、また高温下では接着が弱くなる可能性がありますのでご注意ください。